しつけ置き去り事件の生存率から学ぶ「72時間の壁」を超える3つのポイント

しつけ置き去り事件の生存率から学ぶ「72時間の壁」を超える3つのポイント

災害時にもぜひ応用したい。そんな思いから今回の記事を書いてみた。

悪いことをした罰としての「しつけ」で、北海道七飯(ななえ)町の山林に一人置き去りにされ、その後行方が分からなくなっていた小学校2年の男児・田野岡大和くん(7)が、2016年6月3日朝、自衛隊演習場内にある施設で発見され、無事に保護された。

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大和くんの行方が分からなくなったのが5月28日の夕方。そして発見されたのが6月3日の朝7時50分。その間は約5日半にも及んだ。警察による大規模な捜索も難航し長期化していたため、6月2日の夜には合同捜査本部を解散し、翌3日からは捜索規模も縮小される予定になっていたとのこと。

多くの国民が注目していたこの事件、最悪の結末を考えた人も多かったのではなかろうか。足を滑らせて崖に落ちたのではないかとか、熊に襲われてしまったのではないかなど、色々な憶測も飛び交った。

大和くんはなぜ助かったのか。通常言われる「72時間の壁」、つまり「72時間を経過すると生存率が急激に低下する」と言われている倍の時間も、大和くんは水だけで生き抜いたことになる。

発見した自衛隊員によると、自衛隊員も訓練の一環で7日間の断食生活を送ることもあるが、過酷な自衛隊の訓練の中でも、特にキツい訓練の一つ。それにも増して過酷な状況下で、7歳の男の子が耐え忍んだということは本当に驚き、と語っていた。

「NEWS ZERO」(日本テレビ系)で興味深い検証をしていたので、ぜひ紹介させて頂きたい。

今回の事件で大和くんが6日間も生き抜くことが出来たのは、好条件や偶然が重なったことが大きいと見られているが、そこから、今後の災害時などにも応用できるヒントを見出すことができる。大和くんの知恵を無駄にしてはいけない。

72時間の壁をはるかに超えた大和くんの生存率の3つのポイント

番組のインタビューに答えた山岳地帯における捜索の専門家は、今回の「しつけ置き去り事件」で大和くんが6日間にわたって生存した理由として、以下の3つを挙げている。

  1. 体力を消耗しなかった
  2. 体温の低下を防げた
  3. 水分を補給できた

それぞれを詳しく見てみよう。

1. 体力を消耗しなかった

大和くんは、父親に置き去りにされた現場から一人で山林の中を歩き、自衛隊の演習場内の施設に運良くたどり着いた。その距離は直線で6km、道なりに歩いたら10kmもあり、アップダウンもあるため、自衛隊員が歩いたとしても2時間半はかかるという。

しかし、大和くんが動いたのは、6日間のうちこの時だけ。これだけの距離を歩いて疲れきったのが幸いしたのか、施設に入った後はほとんど動かなかったとのこと。そのことが功を奏し、体力を消耗せずに済んだ。

災害時、たとえ体が無事で動くことができたとしても、食料が確保できないような時には下手に動き回ったりせず、救出が来るまで動かずじっと待ったほうがいいというケースは十分に考えられそうだ。

2. 体温の低下を防げた

6月とはいえ北海道の朝晩は寒い。

函館地方気象台によると、大和くんが行方不明になっていた5月28日から6月2日までの6日間のうち、発見現場付近の最低気温が10度を下回ったのは4日もあった。雨が降った日も多かったためである。

置き去りにされた当時、大和くんはランニングシャツにジャージという薄着姿。普通なら低体温症にもなりかねないような厳しい状況であるが、大和くんは、施設内に置いてあったマットにくるまり、寒さをしのいでいたとのこと。

施設内には電気が通っていなかったが、オフになっているはずのストーブの電源がオンになっていたという。おそらく大和くんが寒さのあまりストーブを付けようとしたのではないかと見られている。

しかし、それでもマットのおかげで最低限の寒さ対策はできたことが幸いした。発見現場にいた自衛隊員の1人は、「マットの間に挟まるようにして体を温めていたことは、低体温を防ぐための適切な判断だったと思う」と話した。

NEWS ZEROでは、果たしてマットにはどれほどの保温効果があるのかを検証していた。

その実験は、81度のお湯を2つのペットボトルに分けて入れ、それぞを、大和くんの発見現場付近の気温に近い10度に保たれた空間に、2時間ほど放置して観察するというもの。

結果、何もしないほうのペットボトルのお湯は約32度まで減少したが、2枚のマットで挟み込んだほうのペットボトルに入れたお湯は約43度までしか下がらなかった。

マットの間に体を挟むだけでもかなりの保温効果があることが実証された。災害時にも、仮に崩れた家の中に閉じ込められたような場合、手の届く範囲に布団や毛布、衣類、それらがなければ新聞紙やダンボールなどがあれば、とにかく何かしらで体を包むことが大事だということだ。

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3. 水分を補給できた

発見後、大和くんが入院した病院の担当医によると、行方不明になる前と比べて体重がさほど減ることもなく、非常に落ち着いた様子で受け答えもしっかりとしているという。

発見された当時、自衛隊員が昼食用に持っていたコンビニおにぎり2個をもらうと、あっという間に食べたという大和くん。6日間も食べ物を食べていなかったのだから当然だろう。

大和くんは荷物を何も持っていなかった。施設にも食料は何もない。あるのは、建物の外にある水道の水のみ。大和くんはその水だけを飲み、6日間を生き抜いたことになる。

「72時間を経過すると生存率が急激に低下する」と言われる「72時間の壁」の倍の時間も水だけで生き延びるなど、そんなことが可能なのだろうか?

番組のインタビューに応じていた医師によると、

「人間が食べ物を食べるのは、生活に必要となるカロリーを摂取するため。しかし、人間は内臓や脂肪、筋肉などにカロリーが蓄えられているため、多少の期間食べ物を食べなくても生存できる。しかし、水分だけは人間が自分の体内で生成することができないため、水分を補給できないと生存率は下がる」

ということだ。

以上見てきたように、今回の事件では、たまたま自衛隊の施設にたどり着き、鍵も開いていて、水道も近くにあり、マットも置いてあったという偶然が重なったことが、大和くんの6日間近くにも及ぶ生存を可能にした。

偶然とはいえ、この事件から学べることは多い。いつ何時起こるかもしれない災害で被災してしまった場合にも応用できる知恵が含まれている。

そもそも今回の事件の原因となった、大和くんの父親が「しつけのため」として7歳の子供を山道に置き去りにしたという行為については批判も多いが、それだけで終わらせてしまうのではなく、大和くんの発見を喜ぶと同時に、サバイバルに関する知識はしっかりと忘れずに、覚えておくようにしたい。

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